しげな、それでいて丁寧な態度をとっている。少しもその態度には偽りがない。
ルパンはこの無邪気な愛くるしい少年に対して、少《すくな》からず困っているようであった。彼は自分のいいたいことを、どういう風にいい出そうかと迷っているようであった。
その時玄関の呼鈴がなった。ルパンは急いで立っていった。
彼れは一通の手紙を持って戻ってきた。
「ちょっと失礼。」といいながら手紙の封を切った。中には一本の電報が入っていた。彼はそれを読んだ。とみるみるその様子は変ってきた。その顔色は輝き出した。彼はすっくと立った。彼はもはや、常に争い闘い、何物をも支配しようとする巨人、人類の王であった。
彼はその電報を卓子《テーブル》の上に披《ひろ》げて、拳を固めてどんと卓子《テーブル》を打って叫んだ。
「さあ、今じゃあ、ボートルレ君、君と我輩との相討《あいうち》だ。」
勝つものは誰か
ボートルレは改まった態度をとった。ルパンは冷《ひや》やかな厳しい口調で語り出した。
「おい!君、お体裁は止めよう。我々はお互に、どうしたら勝てるかと相争う敵《かたき》同士だ。もうお互に敵として談判を
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