ひどい目にあうことが多かった。
 そこで龍睡丸《りゅうすいまる》では、このおそろしい脚気を予防するため、全員、麦飯をたべることを約束した。
 麦飯はまずい。しかし、国家のため、遠く黒潮に乗りだして行くのだ。麦飯は、からだを強くする薬と思ってたべよう。
 この意気ごみで、米と麦と、半々の飯をたべた。
 その他の糧食《りょうしょく》も、ぜいたくなものは、海の勇士にはふむきである。安くて、栄養が多くて、ながい月日、熱帯の航海にもたくわえられるものを、苦心してえらび、糧食庫につみこんだ。
 それから、思いきって実行したのは、
「けっして酒を飲みません」
 と、全員がかたくちかったことであった。
 お医者にたのんで、全員の健康診断をしてから、種痘《しゅとう》をしてもらった。船でお医者のかわりをするのは、船長の私だ。そこで、船で必要な薬品や、医療器具を、じゅうぶんにそなえつけた。
 海にうかぶ船の上では、命のつぎにかぞえられるのが、飲料水である。わるい飲み水は、病気のもとにもなる。
 それで、大小二個の清水《せいすい》タンクを造って、よい飲料水を、横須賀《よこすか》の海軍専用の水道から、分けてもら
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