い。そこで、細長い、三角形の筏《いかだ》を作って、荷物をつむことにしようと、筏の材料を、船から、手あたりしだいに、取りはずして岩に送った。円材、帆桁《ほげた》、木材、大きな板、部屋の戸などを海に投げこむと、波は、すうっと、岩まで運んでくれる。岩の上の人たちは、それをひろって、うらの港で、せっせと三角筏に組み立てた。

 こうして、時のたつうちに、船も、だんだん波にこわされてきた。いつまでも居残って、あんまりよくばっていると、ついには命があぶない。もうきりあげよう。それにこれから、ながい年月住めるような島を、さがしに行かなければならない。
 私たち五人は、ついに、龍睡丸《りゅうすいまる》に心をのこして、じゅんじゅんに、索道で岩にあがった。
「総員集合」
 岩の上に、みんなを整列させて、点呼をして、一人一人しらべてみると、全員ぶじで、けがひとつしていない。私はいった。
「どうだ、この大波をくぐっても、一人のかすり傷を受けた者もない。まったく、神様のお助けである。これは、いつかきっと、みんながそろって、日本へ帰れる前兆にちがいない。これから島へ行って、愉快にくらそう。できるだけ勉強しよう。き
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