もし鉄の船であったら、船をつくって、ハワイに行くことはできなかったろう。それに、昔の帆船の乗組員は、みんなきような人たちであって、たいがいの人は、大工の仕事ができたのである。
その、パール・エンド・ハーミーズ礁を、ぶじに通りすぎようと、龍睡丸は、よい風に帆をいっぱいにふくらませて、ミッドウェー島へと進んでいた。
やがて日がくれて、十八日の午後十時になった。そうすると、今までふいていた北東風が、急にばったり凪《な》いで、風がまったくなくなってしまった。
風で走る帆船が、無風となっては、どうすることもできない。こういう時は、錨を《いかり》入れて碇泊《ていはく》すれば、いちばん安全である。
それで、錨を入れようと思って、海の深さをはからせると、とても深い。百二十|尋《ひろ》(二百十九メートル)の深さまではかれる測深線《そくしんせん》が、海のそこへとどかない。つまり、海はたいへん深くて、百二十尋以上もあるのだ。
しかたなく、船を流しておくことにした。船は潮のまにまに、ぐんぐん流れて行く。
そのうちに、波のうねりが高くなってきた。船は、ぐらんぐらんとゆれはじめた。まっくらやみの海は
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