のいちばんしまいの島、水の出る、ミッドウェー島に龍睡丸が向かったのは、五月十七日であった。
 このとき、龍睡丸につんでいたえものは、ふか千尾、正覚坊三百二十頭、タイマイ二百頭と、たくさんの海鳥であった。

 海鳥のなかでも、アホウドリは、いちばん大きな鳥である。肉は食用になるが、おいしいものではない。卵も食用になる。大きな尾羽は、西洋婦人帽のかざりになり、胸のやわらかい羽は、婦人コートの裏につけるのによい。そのほかの羽は、枕《まくら》やふとんにいれる材料として、輸出されるのである。
 アホウドリが、海から飛びたつときは、風さえあれば、風に向かって、大きなつばさを左右にはっただけで、なんのぞうさもなく、ふわりと空中にうかびあがる。しかし、風のないときは、ほかの海鳥とおなじように、羽ばたきをつづけたり、足で水をかいて、水面を走るようなかっこうをして、飛びたつのである。
 アホウドリは、陸上で、歩いたり、走ったりすることは、たいへんへたで、人が正面から向かって行くと、ただつばさをひろげただけで、どうすることもできない。その名のとおりの「アホウ」で、たちまち人にとらえられてしまう。それで、無人
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