つも動いている。
なんであろうかと近づいてみると、それは、甲羅の大きさが一メートルもある、海がめの正覚坊《しょうがくぼう》が、のそのそしているのであった。なかには、鼈甲《べっこう》がめ(タイマイ)もまじっていた。
「よし、みんなつかまえてしまえ」
一同は、海がめをかたっぱしから、あおむけにひっくりかえした。
これでかめは、重い甲羅を下にして、みじかい足や首を、ちゅうに動かすばかりで、どうすることもできないのだ。この大がめは、頭の方の力がたいへん強くて、頭の方からひっくりかえそうとすれば、大人が三、四人かかって、やっとだ。しかし、うしろの尾の方からなら、一人でころりとひっくりかえされるのだ。かめの重さは、百三十キログラムから、二百二十キログラムぐらいもあった。
このかめを、もっこに入れて、
「えっさ。こらしょ」
と、二人ずつでかついで、波うちぎわにつないである漁船に、つみこんだ。
みんなは、大漁にすっかり喜んでしまって、どんどんかめを運んだので、浜の漁船は、あおむけのかめがもりあがって、かめでいっぱいとなり、船べりから、波がはいりそうだ。
漁業長は、大声でどなった。
「もう
前へ
次へ
全212ページ中34ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
須川 邦彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング