つも動いている。
 なんであろうかと近づいてみると、それは、甲羅の大きさが一メートルもある、海がめの正覚坊《しょうがくぼう》が、のそのそしているのであった。なかには、鼈甲《べっこう》がめ(タイマイ)もまじっていた。
「よし、みんなつかまえてしまえ」
 一同は、海がめをかたっぱしから、あおむけにひっくりかえした。
 これでかめは、重い甲羅を下にして、みじかい足や首を、ちゅうに動かすばかりで、どうすることもできないのだ。この大がめは、頭の方の力がたいへん強くて、頭の方からひっくりかえそうとすれば、大人が三、四人かかって、やっとだ。しかし、うしろの尾の方からなら、一人でころりとひっくりかえされるのだ。かめの重さは、百三十キログラムから、二百二十キログラムぐらいもあった。
 このかめを、もっこに入れて、
「えっさ。こらしょ」
 と、二人ずつでかついで、波うちぎわにつないである漁船に、つみこんだ。
 みんなは、大漁にすっかり喜んでしまって、どんどんかめを運んだので、浜の漁船は、あおむけのかめがもりあがって、かめでいっぱいとなり、船べりから、波がはいりそうだ。
 漁業長は、大声でどなった。
「もう
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