心したよ。あっはっはっは……」
 小笠原老人は、めいった気分を、笑いとばしてしまった。
 こういっているうちにも、船はよく走って、陰気な岩山も、怒濤《どとう》のひびきも、いつか後方はるか、水平線のかなたに、だんだん小さくなっていった。しかし、三人の青年船員の胸には、三十いくつの墓の話が、なかなか消えなかった。
 ――まさか、自分たちもそんなことに――
 と、思うのではなかったが……

   海がめの島、海鳥の島

 いま、われらの龍睡丸《りゅうすいまる》は、波をけたてて、ハワイ諸島にそって、北西に進んで行く。
 ある日、夜が明けてみると、近くに、フレンチ・フリゲート礁《しょう》が見えるではないか。フレンチ・フリゲート礁とは三日月形をした大きな珊瑚礁《さんごしょう》で、この珊瑚礁のなかには、小さな砂の島が、いくつもならんでいた。私は、そのなかの一つの砂島をえらんで、龍睡丸を、その一カイリ沖に碇泊《ていはく》させた。
 さっそく、島をしらべる一隊を上陸させるため、漁船をおろし、漁業長が、水夫と漁夫五人をつれて、砂島に上陸した。
 漁船が、砂島につき、六人が上陸すると、黒い大きなものが、いく
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