は大きくてきれいで、部屋は一人部屋だ。風呂《ふろ》は毎日はいれるし、水はふんだんに使えるんだ。航海は、しけ[#「しけ」に傍点]知らずの碇泊ばっかり。それに、お説教が毎日きかれる。どうだ、龍睡丸から下船してしまえ。こっちへ来れば、毎月、国もとへ送金ができる。親孝行になる」
こんなことをいっては、龍睡丸乗組員の心を、動かそうとした。しかし、われら十六人の心は、びくともしなかった。
これがまた、ひじょうに外国人を感動させ、「龍睡丸乗組員は、世界の海員のお手本だ」といって、日本領事館に、龍睡丸の義捐金を申しこんだり、品物の寄贈を申しこんできた。
領事は、
「御好意はありがたいが、船の修繕は、日本人だけですることになっているから、金銭はお受けしません。品物だけは、龍睡丸へ送りましょう」
と、外国人の義捐金は、きっぱりとことわった。
こうして、船の修繕は、順調にすすんで、いよいよ四月四日、出帆ときまった。
二週間まえの龍睡丸は、折れた帆柱、はさみをなくしたカニのように、錨をうしない、水タンクはこわれて、傷だらけな、みじめな船として、入港したのであったが、今は、新しい帆柱が高くたち、錨
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