、雨はありがたいものであった。天からたくさんの蒸溜水《じょうりゅうすい》を、すなわち命の水を配給してくれるからである。
雨の降る日は、みんな、いっそうほがらかで、にこにこしていた。それは、雨水のためばかりではない。ほかにわけがあった。
雨の日は、午後、小屋の中で、茶話会をすることもあったからだ。茶話会の日には、めったにこしらえないお米のおもゆを雨水でつくって、それを、かんづめのあき缶《かん》や、タカセ貝に入れて、おやつに出すのだ。これは、島いちばんのどちそうで、みんなは、
「ああ、うまい。おもゆというものは、こんなに、うまいものだったのか――」
「舌がとけてしまうほど、おいしい」
などと、思わずいっては、舌つづみをうつ。そして、雨の日の茶話会は、いつでも楽しく、にぎやかで、余興のかくしげいには、感心したり、おなかの皮をよじって大笑いをしたりして、笑声と拍手の音は、太平洋の空気をふるわせ、波にひびいた。そして、アザラシ半島のアザラシどもをおどろかした。アザラシどもは、人間の友だちのさわぎにあわせて、そろってほえた。
茶話会の話は、青年たちのためになることばかりで、まことにわれらの
前へ
次へ
全212ページ中152ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
須川 邦彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング