《まんねんとう》にたまった油煙をあつめて、米を煮たかゆとまぜて、インキのようなものをつくった。そして、海鳥の太い羽で、りっぱな羽ペンはできたが、インキは役にたつものではなかった。
漁業長が、カメアジの皮を煮つめて、にかわをつくって、水夫長のインキにまぜて、とうとうりっぱなインキができあがった。このインキは、水に強く、帆布に文字を書いて海水にひたしても、消えない。
そこで、帆布を救命|浮環《うきわ》にはりつけ、その帆布に、このインキで、
「パール・エンド・ハーミーズ礁、龍睡丸《りゅうすいまる》難破、全員十六名生存、救助を乞《こ》う」
と、日本文で書き、おなじ意味を英文で書いて、伝馬船《てんません》で沖にもっていって、
「われらの黒潮よ、日本にとどけてくれ。――救命浮環よ、通りかかった船にひろわれてくれ」
と念じて、人目につくよう、帆布の小旗を立てて流した。
「インキよ、何年、波風にさらされても消えるな。――文字よ、いつまでも、はっきりしていてくれ。人に読まれるまでは……」
十六人は、この救命浮環とインキに、大きな望みをかけていた。
インキができたので、帆布に日記を書きはじめた
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