、あっちこっち歩いて見はりをしていた。かわいそうに、かれはまだ、おなかのぐあいがよくないのだ。私は、
「小笠原、今夜はありがとう。よくいってくれた。よく見はりに立ってくれた。わかい者たちのためを思ってくれたことは、私には、よくわかっている。これからも、たのむよ」
こういって、かれの肩をたたいた。
「経験のある者だけに、わかることです。船長に、そんなにいっていただいて、うれしいです」
かれは、右手をあげて、空を指さしつつ、
「あの細い月がわかい者にはどくです。あの月を見ているうちに、急に心細くなって、懐郷病(国のことを思って、たまらなくなる病気)にとりつかれますから」
「そのとおりだ。それよりも、おまえには、夜の風がどくだ。まだ腹もよくないようだね。夜の見はり当番ちゅうだけ、これを腹にまいておくといい」
私は、帆布と細い索を、さし出した。
「この老人を、それほどまでに……ありがたいことです」
かれの目には、細い月の光をうけて、星のように、ちらっとつゆが光った。
見はりやぐら
翌朝《よくちょう》、しらしらあけであった。夜中から、小笠原《おがさわら》と交代して、見はり当番
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