宝島の小屋は、草ぶきになった。
水夫長の工夫で、柱と屋根を、丈夫な木の骨組にして、屋根には厚く草をふいた。夜ねるときには、四方に帆布をさげて風よけにし、日中は、その帆布をまきあげておく。雨降りのときは、風よけの帆布を、そとの方へ四方に引っぱって、屋根から落ちる雨水を受けて、石油|缶《かん》にためるようにした。そして、たいせつな雨水が、なるたけたくさんたまるようにと、草ぶき屋根のまんなかへ、「水」という字を、草の根で、大きく紋のようにつけた。
ときどき雨が降るので、たまった雨水を、井戸水にまぜて飲んだ。
草は、われわれには、たいせつなものである。草の根は、できるだけ保護して、草がよくしげるようにした。
屋根を草でふいたことから思いついたのであるが、両方の島の葉のながい草を、ジャック・ナイフでかりとっては、日にほして、馬のたべるような乾草《ほしくさ》を作った。これは、冬の支度である。
乾草をあんで、ござ、むしろのようなものを作って、小屋の中にもしき、また、夜具、腰みの、小屋の風よけなどにしようというのであった。
いったい、帆船の水夫は、工作が上手だ。
船にいるときには、古い索《つな》をほぐして、長い毛のようにし、それを糸にとって、その糸をあんで、靴ぬぐい、ござなどを作る。それから、帆や太い索の、こすれるところへあてる、いろいろの形のすれどめを、上手にあむのだ。
島でもみんな、休み時間に話をしながら、乾草をずんずんあんで、乾草のしき物や、手さげかごなどがりっぱにできた。
たきぎをたばねる縄も、みんな草縄にした。
それから、冬になったら、綿の代りに鳥の羽を利用することも、私は考えていた。
龍宮城の《りゅうぐうじょう》花園
島から少し沖へ出ると、海はとても深い。いったい、海の深さと山の高さとをくらべると、海の深さの方がまさっている。もし世界一の高い山を、世界一深い海へしずめたとすれば、山はすっかりしずんでしまうだろう。
世界一の高い山を、ふもとから見あげたけしきは、大きく美しいが、はんたいに、この山を高い空から、軽気球《けいききゅう》に乗って見おろしたら、また、別の美しさ、雄大さを感じるだろう。
この、われわれの住む空気の世界の高い山を、空の上から見おろしたのとおなじように、私たちは魚の住む水の世界の山を、高いところから見おろすことがで
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