代の、日本船のこわれた杉材や、西洋帆船の太い帆柱をはじめ、たくさんの船材で、これからさき、二ヵ年ぐらいのたきものはある。まるで、たきぎと海がめの、倉庫のような島だ。
流木をしらべていると、その中に、うすい鋼板をはりつけた、船底板があった。これはいいものを見つけた。すぐ、伝馬船につませた。
日がしずまないうちにと、大いそぎで島を一とおりしらべてから、魚の焼いたので、夕食をすませた。時間はまだ日ぐれまでには、一時間ぐらいはあった。すぐに出発すれば、夜中までには、われらの島へ帰れる見こみはある。私は立ちあがった。
「さあ、いそいで帰って、みんなを喜ばせよう」
「それ。出船だ。つれ潮だぞ」
つれ潮というのは、潮が船の進む方向に流れることで、つれ潮に乗ると、船は潮に送られて、速力が出るのだ。
「がんばって漕ごう」
大きな正覚坊六頭と、たきぎを船いっぱいに積んで船足の重い伝馬船は、東へむかって、帰りの航海についた。くたびれてはいるが、宝島の発見で、元気が出て、櫓拍子も勇ましく漕ぎ進んだ。
夕ぐれとなって、太陽が水平線にしずむと、西の空にうかぶ雲は、レモン色の美しさ、それが煉瓦色《れんがいろ》になり、やがて紅色に、だんだんと鉄色の夕やみになってしまった。西の空も水平線も黒くなると、星が青く赤く、鏡の海にかげをうつしはじめた。水平線に近く、ひくいところに光る北極星をめあてに東に方角をきめて、漕ぎつづけた。この星をたよりに、われらの小さな島を、夜の海に、さがさなくてはならないのだ。
そのころ、島に居残っていた人たちは、心配しはじめた。日がくれても、探検船は帰って来ない。探検船には、海図も羅針儀もない。だいじょうぶ、たしかに帰ってくるとは思うが、ちょっとでも方角がそれたら、この島を通りこしてしまうかもしれない。そうしたらたいへんだ。それにしても、西の島は見つかったろうか。ある者は、見はりの砂山にのぼり、やぐらにのぼり、また海岸に立って、星空の下の、まっ暗な水平線を、瞳《ひとみ》をこらして心配そうに、何か見えはしないかと、見つめていた。
しかし、探検船は、帰ってくるけはいもない。時は、ずんずんたっていく。
「火をたけ」
運転士の号令だ。一同は、さっと緊張した。ばらばらっと、砂山にかけあがり、たちまち、大かがり火をたきはじめた。
二時間も三時間も、たきつづけた。たきぎが
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