》の胸《むね》に流《なが》れ出《で》て來《き》た。
 君子《きみこ》が不審《いぶか》しさに母親《はゝおや》の容子《ようす》に目《め》をとゞめた時《とき》、彼女《かのぢよ》は亡夫《ばうふ》の寫眞《しやしん》の前《まへ》に首《くび》を垂《た》れて、靜《しづ》かに、顏色《かほいろ》青褪《あをざ》めて、身《み》じろぎもせず目《め》をつぶつてゐた。
 雨《あめ》はます/\小降《こぶ》りになつて、そして風《かぜ》が出《で》た。木《こ》の葉《は》の露《つゆ》が忙《せは》しく搖《ゆ》り落《おと》される。(をはり)



底本:「淑女畫報」博文館
   1915(大正4)年9月号
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:小林徹
校正:林幸雄
2001年5月15日公開
2006年4月19日修正
青空文庫作成ファイル:
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