世界怪談名作集
鏡中の美女
マクドナルド George MacDonald
岡本綺堂訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)抽斗《ひきだし》には、

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|対《つい》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)思わずふっ[#「ふっ」に傍点]と
−−

      一

 コスモ・フォン・ウェルスタールはプラーグの大学生であった。
 彼は貴族の一門であるにもかかわらず、貧乏であった。そうして、貧乏より生ずるところの独立をみずから誇っていた。誰でも貧乏から逃がれることが出来なければ、むしろそれを誇りとするよりほかはないのである。彼は学生仲間に可愛がられていながら、さてこれという友達もなく、学生仲間のうちでまだ一人も、古い町の最も高い家の頂上にある彼の下宿の戸口へはいった者はないのであった。
 彼の謙遜的の態度が仲間内には評判がよかったのであるが、それは実のところ彼の隠遁的の思想から出ているのであった。夜になると、彼は誰からも妨げられることなしに、自分の好きな学問や空想にふけるのである。それらの学
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