けに、美しく若い二人にとってはその恋を叱られたことが、限りなくも悲しかったに違いないのである。
お登代が泣き濡れた睫毛《まつげ》に雫をためて、思い出したようにまた言った。
「それにしてもあんまりで厶《ござ》ります……。殿様もあんまりで厶ります。……」
「ならぬ! 言うでない! なりませぬ!」
勃然《ぼつぜん》として道弥がうなだれていた面をあげると、きびしく制して叱った。
「殿様をお恨みに思う筋は毫《ごう》もない。お目を掠《かす》め奉った二人にこそ罪があるのじゃ。正直にこれこれとも少し早うお打ちあけ申し上げておいたら、屹度《きっと》御許しもあったものを、今までお隠し申し上げておいたのが悪かったのじゃ。なりませぬ! 殿様にお恨み申し上げてはなりませぬ!」
「いいえ申します。申します。隠した恋では厶りましょうと、あれほどもおきびしゅうお叱りを受けるような淫《みだ》らな戯むれでは厶りませぬ。それを、それを、只のひと言もお調べは下さりませいで、御追放遊ばしますとはあんまりで厶ります。あんまりで厶ります」
「ならぬと言うたらなぜ止《や》めませぬ! どのような御仕置きうけましょうとも、御恩うけた
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