老中の眼鏡
佐々木味津三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)ひと揺《ゆ》れ
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)突然|慌《あわ》ただしい
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#感嘆符疑問符、1−8−78]
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一
ゆらりとひと揺《ゆ》れ大きく灯《ほ》ざしが揺れたかと見るまに、突然パッと灯《あか》りが消えた。奇怪な消え方である。
「……?」
対馬守《つしまのかみ》は、咄嗟《とっさ》にキッとなって居住いを直すと、書院のうちの隅《すみ》から隅へ眼を放ち乍《なが》ら、静かに闇《やみ》の中の気配を窺《うかが》った。
――オランダ公使から贈られた短銃《たんづつ》も、愛用の助広《すけひろ》もすぐと手の届く座右《ざう》にあったが、取ろうとしなかった。刺客《しかく》だったら、とうに覚悟がついているのである。
だが音はない。
呼吸のはずみも殺気の取《うご》きも、窺い寄っているらしい人の気配も何一つきこえなかった。
しか
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