出物の景品にそそのかされでもしたかのごとく、三人目が飛び出して引きしぼったが、的中したのは同じ四本です。
「今度は手前じゃ」
「いや、拙者が早いよ。年の順じゃ。お手際見事なところを見物せい」
先を争いながら出て来た四人目がまたやはり四本でした、五人目が少し出来て五本。
「口程もない方々じゃな。お気の毒じゃが、然らば拙者があの引き出物頂戴致そうよ。指を銜《くわ》えて見ていさっしゃい」
広言吐きながらのっしのっしと現れたのは、鎮西《ちんぜい》の八郎が再来ではないかと思われる、六尺豊かの大兵漢です。膂力《りょりょく》また衆に秀でていると見えて、ひと際すぐれた強力《ごうきゅう》を満月に引きしぼりながら、気取りに気取って射放ったまでは大層もなく立派だったが、何とも笑止千万なことに的中したのはたった二本でした。その途端!
「ウフフフ。アハハハハ。笑止よ喃《のう》。ウフフフ、アハハハ」
爆発するような笑い声があがりました。誰でもない。退屈旗本の早乙女主水之介です。同時に目色を変えて競射に夢中になっていた面々が、さッと色めき立ちました。無理もない。笑ったその笑い声というものが、直参笑いと言うか、
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