旗本退屈男 第七話
仙台に現れた退屈男
佐々木味津三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)仙台《せんだい》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)仙台|伊達《だて》
−−
一
――第七話です
三十五反の帆を張りあげて行く仙台《せんだい》石《いし》の巻とは、必ずしも唄空事《うたそらごと》の誇張ではない。ここはその磯節にまでも歌詞滑らかに豪勢さを謳《うた》われた、関東百三十八大名の旗頭《はたがしら》、奥羽五十四郡をわが庭に、今ぞ栄華威勢を世に誇る仙台|伊達《だて》の青葉城下です。出船入り船帆影も繁き石の巻からそのお城下までへは、陸前浜街道《りくぜんはまかいどう》を一本道に原ノ町口へ抜けて丁度十三里――まさかと思ったのに、およそ退屈男程気まぐれな風来坊も稀でした。身延から江尻の港へふらふらと降りて見たところ、三十五反の真帆張りあげた奥地通《おうちがよ》いの千石船が、ギイギイと帆綱を渚《なぎさ》の風に鳴らしていたので、つい何とはなしに乗ったのが持病の退屈払い。石の巻に来て見るとこれがまた、そぞろ旅情もわびしく、なかなかに
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