がるんです。こうなりゃもうくやしいから、何もかも洗いざらいぶちまけてしまいましょうが、あっしゃ珠数屋へ出入りの職人なんです。ちッとばかり植木いじりをしますんで、もう長げえこと御出入りさせて頂いておりましたところ、――おお痛え! 太夫、命助けだ。もう一服今の気付け薬をおくんなせえまし、畜生めッ、旦那に何もかもお話しねえうちは、死ねって言っても死なねえんだッ。――ああ有りがてえ、お蔭ですっと胸が開けましたから申します。申します。話の起こりっていうのは、さっき御覧になったあの観音像なんです」
「ほほう、やはりあれがもとか。どうやら異国渡りの秘像のようじゃが、あれがどうしたと言うのじゃ」
「どうもこうもねえ、野郎達四人があれを種にひと芝居書きやがったんです。というのが、珠数屋のお大尽も今から考えりゃ飛んだ災難にかかったものだが、十年程前に長崎へ商売ものの天竺珠数《てんじくじゅず》を仕入れにいって、ふとあの変な観音像を手に入れたんです。ところがどうしたことか、それ以来めきめきと店が繁昌し出しましたんで、てっきりもうあの観音像の御利益と、家内の者にも拝ませねえほど、ひたがくしにかくして、虎の子のよ
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