思うていたが、今となって思い返してみると、やはり人が斬りたかったからじゃわ。――しかし、もう斬った。久方ぶりにずい分斬った。そのためか、わしはなんとのう心寂しい! ――では、ずい分堅固で暮らせよ。菊路をも天下晴れて存分にいとしんでつかわせよ」
「ま! おまち下されませ!……どこへお越しになるのでござります。お待ち下されませ! どこへお越しになるのでござります!」
おろおろして、後を京弥が追いかけましたが、しかし、江戸名物旗本退屈男は、ふり返ろうともしないで、黙然と打ちうなだれながら、とぼとぼと闇の向うへ歩み去りました。
底本:「旗本退屈男」春陽文庫、春陽堂書店
1982(昭和57)年7月20日新装第1刷発行
入力:tatsuki
校正:M.A Hasegawa
2000年6月29日公開
青空文庫作成ファイル:
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