様と二人して、ゆうべこっそり手前を訪れ、あの毒蛇を鞍壺に仕掛けるよう、三十両の小判の山を積んで、手前を欲の地獄に陥し入れたのでござります。あの時鉄扇を投げつけたのも、やっぱりお二人様の企らみですぜ」
「なに!?[#「!?」は横一列] 鉄扇も二人の企らみとな? でも、あの時狙われた対手は、たしかに黒住団七と見えたが、それはまたどうした仔細じゃ」
「それがあの方達の悪智慧《わるぢえ》でごぜえますよ。もし、仕掛けた毒蛇でうまく行かねえようだったら、鉄扇でうちの旦那様を仕止めようと、前からお二人がちゃんと諜《しめ》し合って、今、ここにい合せた八人のご浪人衆に、それぞれ鉄扇を持たせて、どこからでも投げられるように、幔幕外《まんまくそと》のところどころへ忍ばせておいたのでござります。だからこそ、黒住の旦那様は、初めからそれをご存じでごぜえましたので、うまくご自身は身を躱《かわ》したんでごぜえますよ。さもあの方が狙われたように見せかけた事にしてからが、黒住の旦那様の悪智慧なんでごぜえまさあ。ああしてご自身をさもさも狙ったように見せかけて投げつけりゃ、事が起った場合、御番所の方々のお見込みが狂うだろう
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