ゃりちゃりと山吹色を鳴らしてみせましたので、笑止なことには根が下司《げす》な中間共です。
「はあてね。いい色していやがるね。じゃ、あの、本当にこれがお好きなんでごぜ[#「ぜ」は底本では「ざ」と誤植]えますかい」
小判の色に誘惑でもされたもののごとく、ついうっかりと警戒を解きながら、乗り気になって来たので、すかさずに退屈男が油をそそぎかけました。
「下手の横好きと言う奴でな。ついせんだっても牛込の賭場で、三百両捲き上げられたが、持ったが病で致し方のないものさ。これだけで足りずば屋敷へ使いを立てて、あと二三百両程取り寄せても苦しゅうないが、存じていたら、そち達の寺場に案内せぬか」
「そりゃ、ぜひにと言えばお教え申さねえわけでもござんせぬが、実あ、こないだうちここへ御主人のお供致しまして、馬馴らしに参りますうちに六松と昵懇《じっこん》になって、あいつの手引で行くようになったんでごぜえますからね。そうたびたび弄《なぐさ》みに参ったわけじゃござんせんが、寺場って言うのがちっと風変りな穴なんでごぜえますよ」
「どこじゃ。町奴共の住いででもあるか」
「いいえ、手習いの師匠のうちなんでごぜえますよ」
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