たが、売られた方ももうそうなったならば、いっそ男らしく抜けばいいのにと思われるのに、よくよく見るとこれが無理もないことでした。――年はよくとって十八か九、どこか名のあるお大名の小姓勤《こしょうづと》めでもしているとみえて、普通ならばもうとっくに元服していなければならない年頃と思われるのに、まだふっさりとした前髪立《まえかみだ》ちの若衆なのです。
だからというわけでもあるまいが、なにしろ一方は見るからに剣豪《けんごう》らしいのが、それも四人連れでしたので、どう間違ったにしても不覚を取る気遣いはないという自信があったものか、中でも一番人を斬りたくてうずついているらしいのが、最初に追っかけて来た四十侍に代り合って若衆髷の帰路を遮断すると、もう柄頭《つかがしら》に手をかけながら、口汚なく挑みかかりました。
「生《なま》ッ白《ちろ》い面《つら》しやがって、やさしいばかりが能じゃないぞッ。さ、抜けッ、抜かぬかッ」
可哀そうに若衆は、垣間《かいま》見ただけでも身の内が、ぼッと熱くなる程な容色を持っているというのに、こういう野暮天な人斬り亡者共にかかっては、折角稀れな美貌も一向役に立たぬとみえて、
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