右門捕物帖
子持ちすずり
佐々木味津三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)眼《がん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)松坂|甚吾《じんご》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「及ばねえ」は底本では「及ばねね」]
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その第三十六番てがらです。
事の起きたのは正月中旬、えりにえってまたやぶ入りの十五日でした。
「えへへ……話せるね、まったく。一月万歳、雪やこんこん、ちくしょうめ、降りやがるなと思ったら、きょうにかぎってこのとおりのぽかぽか天気なんだからね。さあ行きましょ、だんな、出かけますよ」
天下、この日を喜ばぬ者はない。したがって、伝六がおびただしくはめをはずしてやって来たとて、不思議はないのです。
「腹がたつね。こたつはなんです? そのこたつは! 行くんだ、行くんだ。出かけるんですよ」
「お寺参りかえ」
「ああいうことをいうんだからな。正月そうそう縁起でもねえ。きょうはいったいなんの日だと思っているんですかよ。やぶいりじゃねえですか。世間が遊ぶときゃ人並みに遊ばねえと、顔がた
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