十八歳。同鈴文手代。同じく丁稚より住み込み。
 罪状、主家金子壱千百三十両使いこみ。ただし、両名の申し立てに不審のかどあり。お吟味中入牢」
 そういう不思議なお記録でした。
 同じ両替屋の手代であるというのも意外なら、主家金子壱千百三十両使い込み、ただし、両名の申し立てに不審のかどあり、お吟味中入牢とある一条は、見のがしがたき文字です。
 がぜん、名人の目がさえ渡りました。
「あれなる両名のお係りはどなたじゃ」
「敬四郎どのでござる」
「ははあ……そうか。とんだめぐり合わせじゃのう、伝六よ」
「へえ……?」
「よろこべ、よろこべ、あばだんなのしりぬぐいを仰せつかったぞ。これをようみい」
「……? エへへ……なるほどね。道理で、近ごろろくろく顔を見せずにしょげていましたっけ。あきれたもんだね。不審のかどありとは、よくもしらをきったもんだ。大将の手がけたあなで、不審のかどのねえものはねえんですよ。さあ、忙しい! ちきしょうめ。さあ、忙しくなりましたね」
「あわてるな。まだしりからげなんぞしなくともいいよ。気になるのは、この不審のかどとあるその不審じゃが、源内どの、様子お知りか」
「知ってい
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