るめえ。いかにも首尾の松へ五人の船頭をしめ殺してつりさげたのはこのおれだ。自身番からあの夜ふけ盗み出したのもこのおれの細工だ。しかし、ただじゃ年貢《ねんぐ》を納めねえんだ。ひょっくり右門。これでもくらえッ」
さっと立ち上がると、懐中奥深く忍ばしていたドスを抜き払って、名人の脾腹《ひばら》目がけながら突き刺しました。と見えたのは一瞬です。
「見そこなうなッ。草香の締め手を知らねえのかい!」
声といっしょにぎゅっとドスもろともそのきき腕をねじあげたかとみるまに、ぐっとひと突き、こぶしの当て身がわき腹を襲いました。
「おとなしく寝ろい。慈悲を忘れたことのねえむっつり右門だが、今夜ばかりゃ気がたってるんだ。伝六、早くこいつを始末しな」
「いいえ、そ、そ、それどころじゃねえんだ。ほらほら、あいつも逃げた、こっちも逃げやがった。女も、船頭も、太鼓野郎も、みんなばらばらと逃げだしたんですよ。手を! 手を! ひとりじゃ追いきれねえんだ。はええところてつだっておくんなせえよ」
「そんなものほっときゃいいんだよ。根を枯らしゃ、小枝なんぞひとりでに枯れらあ。息を吹きかえさねえうちに、この赤い芋虫を舟まで
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