たというからにゃ、首尾の松の首っつりもこの家のうちに根を張っているにちげえねえんだ。お城御用まで承る後藤の店でうそをつくはずはねえ。乗り込んで、ひと洗い洗ったらどうでござんす」
「やかましい! だれだッ。そんなところでがんがんいうやつあ!」
そのとき、ぬっと門わきの下男べやからのぞいた顔がある。
三十四、五のふてぶてしい男でした。後藤の店で話した若党にちがいないのです。
伝六の目から、当然のごとくに火が飛びだしました。
「がんがんいうやつたア何をぬかしゃがるんだ。人を見てものをいいねえ! うぬアこのうちの下っぱか!」
「下っぱならどうだというんだ。これみよがしに十手をふりまわしているが、うぬア、不浄役人の下っぱか!」
「野郎。ぬかしたな! 不浄役人の下っぱたアどなたさまに向かっていうんだ。詮議《せんぎ》の筋があって来たんだ。うぬのうちア三蓋松か!」
「知らねえや。とちめんぼうめ! かりにも法眼《ほうげん》の位をいただいたおかたさまのご隠宅なんだ。うぬらごとき不浄役人の詮議うける覚えはねえ。用があったら大目付さまの手形でも持ってきやがれッ。ふふんだ。ひょうろく玉めがッ」
「野郎ッ。
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