の不審牢へあの米屋の親子をたたき入れて、しきりと責めたてていたさいちゅうなのでした。
声はない。ずいと牢格子《ろうごうし》の中へはいっていくと、さみしく笑っていったことです。
「あいかわらず荒療治がおすきだな。目違いもいいかげんにしないと、のろい殺されますよ。増屋のおやじ! きょうだいを連れて早くかえりな」
「なにをするんだ。なにをかってなまねをするんだ」
いきりたとうとした敬四郎の目の前へ、
「このとおり、みやげがござる。お礼でもいわっしゃい」
駕籠からふたりをつれ出すと、静かにさしつけていいました。
「増屋のおやじ。つまらねえ隠しだてをするから、目違いもされるんだ。なぜ、あのとき小判を埋めにいったと、正直に白状しなかったんだ」
「あいすみませぬ。女房の前身も前身、金も金でござりましたゆえ、世間に恥をさらしてはと、つい口が重かったのでござります……」
「そんなことだろうと思った。これからもあるこったから、隠しごとも人を見ておやりよ。そちらの敬だんなのようなおかたがいらっしゃるんだからな。角兵衛の子どもたちは、死にたいか、生きておりたいか」
「生きておりとうはございませんけれど、浅草のお師匠さまにおわび申しとうござります……」
「いじらしいことだな。法は曲げられぬ。一度はお牢屋《ろうや》に入れますがのう。おじさんがすぐ永徳寺へ知らせてあげますから、まもなくお師匠が救いとって、慈悲のおそでの下へかばってくれましょう。それまでのしんぼうじゃ、おとなしゅう牢屋へはいりなさいよ」
「あい、はいります……ふたりして、いっしょにはいります……」
進んで入牢《じゅろう》を急ぐ子どもたちと、喜んで牢を放たれるきょうだいたちが、右門のそでの陰でさびしく笑顔《えがお》を送り合いました。
底本:「右門捕物帖(四)」春陽文庫、春陽堂書店
1982(昭和57)年9月15日新装第1刷発行
入力:tatsuki
校正:kazuishi
2000年3月13日公開
2005年9月24日修正
青空文庫作成ファイル:
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