だ。むっつり右門の目が光ったとなると、事は早いよ。野郎め、お槍をひっかついで高野《こうや》へとっ走ったぜ」
「はてね、高野とね。お大師さまが何かないしょでおっしゃりましたかい」
「いったとも! いったとも! あの女、なかなかしゃれ者だよ。行き先を聞きたけりゃあの世へ来いとぬかしたが、お大師さまがこのとおりちゃんとあの世からおっしゃっていらあね。このご尊像があるからには、宗旨は高野山だ。おまえなぞ知るめえが、高野はこの世のあの世、ひと足お山の寺領へ逃げ込めば、この世の罪は消滅、追っ手、捕《と》り手、入山禁制のお山だ。この世を逃げても、せめてご先祖だけはいっしょにと、位牌を背負ってとっ走ったにちげえねえよ。山へ入れたら指をくわえなくちゃならねえ! まだとっ走って一刻《いっとき》とはたつめえから、早だッ。宿継《しゅくつ》ぎ早の替え駕籠二丁仕立てろッ。ここからすぐに追っかけるんだ」
「ちくしょうッ。たまらねえね。とっ走りを追っかけて、遠っ走りとはこれいかにだ。お大師さま、たのんますぜ! さあ来い、野郎だッ」
 うなりをたてながら飛び出していったかと思うまに、伝六得意の一つ芸、たちまちそろえたの
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