、奥の座敷の片すみに、必死と顔を伏せている女のところへ静かに近よりながら、まず穏やかにいったことでした。
「おまえさんが岩路《いわじ》というんだろうね」
「…………」
「ほほう。親が槍師だ。武物を扱う稼業《かぎょう》だけに、いくらか親の血をうけているとみえて、強情そうだね、そっちが一本槍で来るなら、こっちは七本槍で責めてやらあ。まずお顔を拝見するかね」
「…………」
「手向かったら、だいじなお顔にあざがつきますよ。おとなしくこっちへ向けりゃいいんだ。――ほら、こうやって、そうそう。ほほう、なかなかべっぴんさんだね。いい女ってえものには、とかく魔物が多いんだ。むだはいわねえ。なんだって中山数馬さんをあんなむごいめに会わしたんですかい」
「…………」
「思いのほか手ごわいね。女が強情張るぐれえたかがしれていらあ。むっつり右門の啖呵《たんか》と眼《がん》の恐ろしさを知らねえのか! べらぼうめ、責め道具は掃くほどあるんだ。名こそ書いてはねえが、この扇子もおまえさんの品のはずだ。この懐紙入れもおまえさんがたいせつにしていた持ち物のはずだ。いいや、もっと急所があらあ、やましくもねえものが、可賀に張
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