の一点、なぞもまたその一点。
「それなるふた品、拝見させていただきましょう」
蔵人の手からうけとって見ながめたかと思われるや、まことに快刀乱麻を断つがごとし、即座にずばりといったものです。
「ご城内奥女中のご用品でござりまするな」
「な、なぜおわかりじゃ! なぜこれが奥女中の品とおわかりじゃ」
「この紅いろ扇子がその証拠。骨に透かしがござります。紅いろ透かし骨の扇子といえば、日本橋石町たらちね屋が自慢の品物、たしか大奥にも出入り御用を仰せつかっているように聞いておりましたゆえ、奥女中の持ちものとにらんだだけのことでござります」
「灯台もと暗しとは、まさしくこれじゃのう。お城仕えのわれわれが存ぜぬとはうかつ千万、面目次第もござらぬわい」
「えへへ。いえなに、知らねえのはお互いさまでね。知らぬあんたがたが別段うかつというわけじゃねえんだ。おらのだんなが、すこうしばかり物を知りすぎているんですよ。ね、だんな。事ははええがいいんだ。大奥であろうが、天竺《てんじく》であろうが、人を殺した女をのめのめ見のがしておいたら、八丁堀の恥になるんだからね。どんどんと乗りこんでめえりましょうよ」
「うるさ
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