分かれ地蔵にけちをつけようと、四人の浪人者に五十両やる約束でそれを請け負わしたのよ」
「いかさまね。それから」
「まんまと六体のお地蔵さまにけちをつけてさらしものにしたからね、浪人のひとりがみんなに代わって、約束の五十両を了見よろしからざるその坊主のところへもらいにいったんだ。しかし、分けまえは人数の多いより少ないほうがよけい取れるに決まっているんだからな、四人より三人で分けようと、金を受け取りにいったやつのけえりを待ちうけておって、まずひとり、ばっさり仲間をばらしたのよ。その殺されたのがすなわちあれさ。あの一真寺寄りのあの死骸《しげえ》だよ」
「へへえね。まるでその場に居合わせたようなことをおっしゃいますが、そんなことがひと目でわかりますかい」
「まだあるんだから黙ってろよ。ところでだ、三人で五十両手にしてはみたが、仲間はひとりでも減るほど分けまえは多くなるんだからな。三人のうちのふたりがしめし合わせて、ひとりを酒買いにやったってのよ。それとも気づかず、一升ぶらさげて帰ってきたところを、ばっさり同じ一刀切りでばらされたのが、酒屋のほうからこっちを向いてのめっているあの浪人者さ」
「ほんとうですかい」
「知恵蔵が違うんだ、知恵蔵のできぐあいがな。そこでだよ、まずこれでしめしめ、五十両は二つ分け、二十五両ずつまんまとふところにしまっておいて、いっぺえ祝い酒をやろうかいと、ところもあろうに道のまんなかで飲みだしたその酒が、あにはからんや毒酒だったのよ。――わかるかい」
「はあてね」
「しようがねえな。酒を買いにやらされたそのやっこさんが、じつは容易ならぬくせ者だったのさ。五十両ひとりでせしめたら、こんなうめえ話はあるめえ、酒を買いによこしたのをさいわい、毒を仕込んでふたりを盛り殺してやろうというんでね、かねて用意しておったのか、それともどこかそこらの町医者からくすねてきたのか、死人に口なしで毒の出どころはわからねえが、いずれにしても使いにいったやつがこっそり一服仕込んで、なにくわぬ顔をしながら帰ってきたところを、毒殺してやろうとねらっていたふたりにかえって先手を打たれて、ひと足先にばっさりやられる、やっておいて毒が仕込んであるとも知らずに飲んだればこそ、因果はめぐる小車さ。このとおり、このふたりが一滴の血も見せず、また命をとられてしまったんだ。ふところから切りもち包みが
前へ
次へ
全24ページ中20ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング