ら3字上げ]願い主 芝入舟町甚七店
[#地から2字上げ]束巻き師 源五兵衛
[#天から2字下げ]家出人お係りさま御中

 というのが一通。

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昨日、一昨日と再度お訴状差し出し候えども、いっこうにお取り上げこれなきは心外にたえず候。お役向きご繁忙にてお目漏れなら格別、もし何かいわく子細これあり候ために依怙《えこ》のおさばきなされ候てかくお取り上げこれなくとならば、われらにも覚悟これあるべく候。なんのこれしき、下民のせがれの家出くらいとおぼしめすかも候わんが、弥七郎を失わば拙者の命奪わるるも同然、子を思う親の心は、お係りさまはじめ、みなみな一様と存じ候えば、至急にお取り上げお捜し出しくだされたく、右懇願つかまつり候。
 正月二十三日
[#ここで字下げ終わり]
[#地から3字上げ]願い主 芝入舟町甚七店
[#地から2字上げ]束巻き師 源五兵衛
[#天から2字下げ]家出人お係りさま御中

 というのがその第三通めでした。
「はあてね」
 うるさいやつが、読み終わると同時に、さっそくあの首をひねったことです。
「ちっとこりゃおかしいじゃござんせんか」
「何がよ」
「きょう
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