えれえ! さすがはお江戸の名人と名工だ。火をかぶった泥斎もえれえが、じっと見ていただんなもみごとだね。しいーんと身の内が締まりましたよ」
「感心している場合じゃねえや。この人形たいせつに持って、すぐに伊豆守様のお屋敷へいってきな。――直訴のなぞは、この青焼き人形でござります。恐れながら、これには三人の人の命がこもっておりまするゆえ、末長くご秘蔵願わしゅうござりますと、ご用人さまにお取り次ぎお願いしてな。羽織はかまで今からすぐ献上に行ってきなよ」
「なるほど、そつがねえや。名工と名人が世に出したこの青人形が、名宰相さまのお手もとに納まりゃ、仏も人形も浮かばれましょうよ」
泣き伏している粂五郎をあとにしながら、必死と青人形をかかえ持って駆けだした伝六の背に、ちらりほらりと江戸雪がもの悲しげに散りかかりました。
底本:「右門捕物帖(三)」春陽文庫、春陽堂書店
1982(昭和57)年9月15日新装第1刷発行
入力:tatsuki
校正:kazuishi
2000年5月23日公開
2007年2月19日修正
青空文庫作成ファイル:
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