、この泰平な世の中に、そんなおかしな捨て子なんぞがあってたまるもんけえというんでね、さっそく飛んでいってみるてえと、――ほら、なんとかいいましたっけね、あそこの町のまんなかに大きな橋があるじゃござんせんか。ありゃなんといいましたっけね」
「どこの町だよ」
「日本橋の大通りにあるじゃござんせんか[#「ござんせんか」は底本では「ござせんか」]、東海道五十三次はあそこからというあの橋ですよ」
「あきれたやつだな。あいそがつきて笑えもしねえや。日本橋の大通りにある橋なら、日本橋じゃねえかよ」
「ちげえねえ、ちげえねえ。その日本橋の人通りのはげしい橋のたもとにね、目をくるくるさせながら、この子がころがっていたんだ。だから、ともかくこいつをはええところ抱きとっておくんなせえよ」
「受け取るはいいが、なんだってまた、おれがこれを受け取らなくちゃならねえんだ」
「じれってえだんなだな、捨て子はこの子がひとりじゃねんだ。まだあとふたりも同じようなのがころがっているんですよ。だから、あとのを運ぶに忙しいといってるんじゃござんせんか」
「ちぇッ、なんでえ。あきれけえったやつだな。それならそうと、最初からはっ
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