つのつらだましいは尋常じゃねえからね。おそらく、切り取り強盗のこやつと一味のやつらもそれ相当手ごわい連中ばかりでしょうから、そこのところを抜かりなくじょうずにひと知恵絞ってね、ひと網にお捕《と》りのときもずんと腹をすえておかかりなせえましよ。お使いをくださりゃ、からだに暇のあるかぎり、必ずともにおてつだいもいたしましょうからね。じゃ、急ぎますから失礼いたしますよ」
条理の前には屈するのほかはない。われらが名人の腹を割り、事を分けての忠言に、いかなあばたの敬四郎もこのうえ横車は押せないとみえて、ようしとばかり心よく手を引きながら、にせ手口荒かせぎの浪人者を締めあげにかかったので、名人もまたあとになんの懸念も残さずさっさとお組屋敷へ帰ると、目をぱちくりさせている伝六へ、ずばりと一本まず見舞いました。
「いいか。これからがおいらのあごにものをいわせなくちゃならねえだいじなときなんだ。そばで破れ太鼓を鳴らしたら、主従の縁を切るぞ」
はあてね、というように小さくなりながら、へやのすみへ神妙に引きさがったのを振り向きもせず、名人はひざの前へあのぶきみなわら人形をずらずらと裏返しに並べておくと、
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