ぱいいち涼み酒とはどんなものかね。油をぬいた江戸っ子好みのかば焼きかなんぞを用いてね。どうですね、いけませんかね」
「生臭食ったら辰《たつ》が泣くよ。だいいち、さっきの精霊《しょうりょう》だながまだでき上がっていねえじゃねえか。早くこしらえておいてやらねえと、あしたの晩やって来ても、寝るところがねえぜ」
「ちげえねえ、ちげえねえ。なるほど、それにちげえねえや。とんだ忘れ山のほととぎすだ。辰め、まごまごしやがって、上方へでも迷って出りゃたいへんだからね。おうい、かごや。きょうはおいらが身ぜにをきって乗るんだ。ぱんぱんと八丁堀まで雲に乗って飛んでいきな――」
二つの駕籠《かご》を追いかけて、江戸屋江戸五郎の小屋から、景気よく客寄せのはやし太鼓が、風に送られながら伝わりました。
底本:「右門捕物帖(三)」春陽文庫、春陽堂書店
1982(昭和57)年9月15日新装第1刷発行
入力:tatsuki
校正:小林繁雄
2000年4月8日公開
2005年9月21日修正
青空文庫作成ファイル:
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