ところにお力借ろうと飛び込んできたんでござんす。もうほかに何も隠していることはござんせぬ。どうか、おねげえでございますから、だれがいったいほんとうの下手人だか、幽霊水の正体ご詮議くだせえまし。このとおり、ちっちぇえからだを二つに折っての頼みでござんす、頼みでござんす……」
「いかさまな。夏場に外出はあんまりぞっとしねえが、正体のわからねえ幽霊水なんて、存外とおつな詮議かもしれねえや。じゃ、あにい! 伝六親方!」
「…………」
「へへえ。ちっとまた荒れもようだな。何が気に入らねえんだ。おれが横から飛び込んであごの講釈したのが気に入らねえのかい」
「バカにしなさんな。むっつり右門はあごのだんな、伝六だんなはおしゃべりだんなと、近ごろ軽口歌がはやっているくれえのものです。そのあっしが、だんなのお株を奪って、あごに物をいわせるようになりゃ、だんなのしょうべえは干上がっちまうじゃござんせんか。そんなことに腹たてているんじゃねえんだ。あっしの気に入らねえのは、このちっちぇえやつなんですよ。べらぼうめ、そんなべっぴんの妹がいるのに、なぜまた出しおしみして、おめえなんぞが、まごまごとこくのねえつら、さ
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