幽霊水の詮議《せんぎ》もこっちの気の入れ方が違うというもんだぜ」
「恐れ入りました。お目の鋭いのにはおっかねえくらいです。べつに隠すつもりではなかったんですが、ついその――いいえ、ほかのことは、幽霊水の話も、嵐三左衛門が江戸五郎親方のことを下手人のようにいっていろいろ吹聴していることも、みんなほんとうですが、縁もゆかりもねえといったのはうそでござんす。いかにも、お隠しだてしておりました。じつは――」
「一座の者か」
「いいえ、わっちゃ座方の者でも親類でもねえんですが、妹めが、その、なんでござんす、ずっとまえから江戸五郎親方に、その――」
「かわいがられているとでもいうのかい」
「へえい。まあ、ひと口にいや囲われ者になっているんでござんす。だから――」
「なるほど、ちっと眼が狂ったようだが、じゃなにかい、鼻緒のその正体は、妹がなにか三味線いじりをしているんだな」
「へえい、ほんの少しばかり、糸の音の好きなおかたなら、墨田舎二三春《すみだやふみはる》っていや、あああれかとごひいきにしてくださるけちなやつでござんす。だから、人気|稼業《かぎょう》の名にかかわっちゃと、妹の素姓の出ねえようにお
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