のあのいもづらを見るてえと、むしずが走ってカンカンとくるから、われしらず逆上しちまうんですよ。畜生めッ、さあ、おもしろくなったぞッ。じゃ、風に乗っていってめえりますから、すぐお出ましできるように、おしたくしておいておくんなせえよ」
胸のつかえが通じてしまったとならば韋駄天《いだてん》走り――。
2
当人のことばどおり、風のように走っていって、風のように駆け帰ってくると、果然、名人の予言は当たりました。
「ホシだッ、ホシだッ。お番所はどえれえ騒ぎですぜ」
「お年賀登城のお大名がたにでも何かまちがいがあったのかい」
「ところが大違い。本郷のね、妻恋坂で人が殺されたっていうんですよ」
「また人殺しか。あんまりぞっとしねえな」
「とおっしゃるだろうと覚悟してめえりましたが、詳しく聞くと、なかなかこれがぞっとする話なんだから、まあお聞きなせえまし。訴えてきたのは妻恋坂の町名主だっていうんですがね、殺されている相手が考えてもかええそうじゃござんせんか。十と、八つと、六つの子どもだっていうんですよ」
「なに! 子どもばかり三人やられているとな! ふうむな。いかさま、ちっとよろしくな
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