の必要から、出刃包丁の突き傷をこしらえたのか、それとも、出刃包丁で突いておいて、なお入念にも細ひもで絞めつけたのか、いずれにしても、それなる首筋のみみずばれこそ、事件のなぞを解く唯一のかぎであることが判定されたので、フフンというように微笑したのを、早くも敬四郎がちらりとながめて、おそるべき勁敵《けいてき》の捕物名人に、おそるべき慧眼《けいがん》のホシをつけられたら、しょせんたち打ちはできないと思ったものか、つかつかとやって来ると、案の定食ってかかりました。
「何をするのじゃ! 死骸《しがい》に指一本たりとも触れると許さぬぞッ、者ども! おせっかい者のじゃまがはいってはならぬゆえ、三つのむくろ、戸板にでものせて、早う番所へ連れていけ」
つきのけながら、配下に命じて、自分は名人にてつだってもらってようやく押えたなぞの狂人を引っ立てながら、ネタになるものは何一つやるまじといいたげに、憎々しく流し目を残して、意気|昂然《こうぜん》と引き揚げていったので、当然のごとくに伝六がいろめきたちました。
「なんでえ! なんでえ! 恩知らず! 首筋のみみずばれに眼《がん》をつけたのも、あぶねえ気違いを押
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