計らいでした。
「晴れの勝負に、そなたもその短いわきざしでは不自由でござろう。使い納めに、こちらをお持ちめされよ」
 手にしていた千柿鍔の長刀を四郎五郎左衛門に投げて渡すと、
「さ! 伝六ッ。おまえはこれを使え!」
 みずからの腰の細身の蝋色鞘《ろいろざや》を抜いて渡して、
「小梅さんは、こちらをお使いなさいまし」
 短い腰の小刀をも、父のあだ討つ小梅に手渡しながら、本人はまったくの無腰。しかも、ゆうぜんとしていうのでした。
「さ! 両名とも、かかれッ」
 声に、伝六、小梅が必死に構えましたが、腕が違うのです。三品流の達人とは、いかさまそのとおり。
「このようななまくら腕で、かたき討ちが片腹痛いわッ。きのどくながら、返り討ちだぞッ」
 あざ笑いながら四郎五郎左衛門が、まず伝六から先にといわぬばかりにいどみかかってきたのを、
「見そこなうなッ。右門がすけだちしているんだッ」
 ずばりというや、おどり込みざまに無敵無双の草香流です。パッときき腕とって、ねじ上げながら、体をひねると岩石おとし! あおがえるのように雪の上へ、四郎五郎左衛門が長々とのめったところを――左から小梅が一刀! 右から伝
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