出るか、へびが出るかわからねえが、ではとって押えろッ」
心得たとばかりに、伝六、辰の両名は、横っとびでした。
3
しかるに、道向こうのそれなる仙市宅へ駆けつけていってみると、これが奇態でした。いや、いよいよ不審でした。ぴったりと雨戸が締まっているのです。早くも風をくらって逐電したのか、まだ八ツになるかならぬかの昼日中であるのに、どこもかしこもぴったりと戸がおろされていたものでしたから、伝六の鳴ったのは当然――。
「ちくしょうめッ。手数のかかるまねしやがるじゃねえか! だからいわねえこっちゃねえんだッ。ろくでもねえ猿《えて》しばいなんぞにいって、のうのうとやにさがっているから、こういうことになるんですよ! どこへうせやがったか、またむだな詮議《せんぎ》しなくちゃならねえじゃござんせんか!」
おこり上戸のおこり太鼓を、柳に風ときき流しながら、いとものどかにあごをなでなで、しきりと家のまわりをのそのそやっていた様子でしたが、そこの、ちょうどお勝手口のところまでいったとき、
「ふふん――」
とつぜん名人が、ふふんと吐き出すようにいうと、にやりとやりました。そのまたふふんな
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