「この持ち主は座頭だな!」
「えッ?」
「この杖の持ち主は、あんまの座頭だなといってるんだよ」
「たまらねえな! ピカピカッと目を光らすと、もうこれだからな。しかし、どこにもこの持ち主が座頭だなんてことは書いてねえようだが、どうしてまたそう早く知恵が回りますのかね」
「また始めやがった。眼をつけりゃ、じきとおまえはそれをやるんだからな、うるさくなるよ。青竹づえはあんまの小僧、丸樫杖は一枚上がって座頭、片撞木《かたしゅもく》はさらに上がって勾当《こうとう》、両撞木《りょうしゅもく》は※[#「てへん+僉」、第3水準1−84−94]校《けんぎょう》と、格によって持ちづえが違っているんだ。してみりゃ、この丸樫杖の持ち主が座頭であるのに不思議はねえじゃねえか」
「なるほどね。だんなの博学は、おいらの博学と見ちゃまた桁《けた》が違わあ。そうと眼がつきゃ、大忙しだ。もののたとえにも、めくら千人めあき千人というんだから、江戸じゅうの座頭をみんな洗ったってせいぜい千人ぐれえのものなんだからね。大急ぎで洗いましょうぜ! さ! 辰公! 何を遠慮してるんだッ。とッととしたくをしなよ!」
 気早にせきたて、もう
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