じめてズバリと言い放たれました。
「そうか! 筋書きがそう調子よくおいでになりゃ、なにもあごのまばらひげなんぞまさぐるにゃあたらねえや。ご高家仕えのご用人さんだから荒っぽい痛み吟味もできねえし、どうしたもんだろうとひと汗絞るところだったが、万事がおあつらえ向きだ。じゃ、伝六ッ、辰ッ、おおかたふたりで池ノ瑞でも浮かれ歩くつもりにちげえねえから、見失わねえようにすぐあとをつけろ。ひと足おくれていくから、合い図しろよ」
命じておくと、まことに右門流でした。
「ちと変なお願いでござんすが、お由さん、大急ぎで鳥追い姿にやつしてくれませんか」
「…………?」
「ご不審はあとでわかりますから、ひとっ走りお宅へ帰って、早いところおしたくしてくださいましよ」
くし巻きお由、今こそ堅気のあだ者お由でしたが、一年まえまでは生き馬の目を抜いたはやぶさお由です。名人の胸中を早くも読んだものか、遠くもない天神下へ小走りに駆けだしていったものでしたから、そこの四つつじにたたずみながら、したくの整うのを待ちました。
4
「これでようござんすか」
時を移さず姿をやつして、鳥追い笠《がさ》に、あだめか
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