並みの背に産んでくれるに相違ねえから、もっと仏心出して相手になれよ」
「…………」
「耳ゃねえのか!」
「…………」
「ちょッ。やけに目色変えて、豆ばかりいじくっていやがらあ。だから、豆公卿《まめくげ》だなんかと陰口きかれるんだ。――ね、だんな! ちょっと、だんな!」
「…………」
「いやんなっちまうな。だんなまで、あっしをそでにするんですかい。あごなんぞなでりゃ、何がおもしれえんですか。からだ持ち扱っているんですから、人助けだと思って相手になっておくんなさいよ」
 あちらへ当たり、こちらへ当たって、八つ当たりに鳴らしていると――、玄関先に声がありました。
「頼もう! 頼もう!」
「よッ。やけに古風なせりふぬかしゃがるぞ。羅生門《らしょうもん》から鬼の使者でも来やがったのかな」
 ガチャガチャしてさえいたら、それでむしが納まるとみえて、しきりにひとりではしゃぎながら出ていったようでしたが、まもなく引き返してくると、鬼の首でもとったように手の中で一通の書状をひらひらさせながら、口やかましくいいました。
「そうれ、ごらんなさいよ。お羽黒山の雷さまだって、こんなにいい鳴り方はしねえんだ。あっ
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