主人同様に切り盛りしてござります」
「手数のかかるやつよのう。それならそれと初めから申せばよいのに、その番頭に用があるのじゃ。はよう呼べ」
聞きつけたとみえて、奥から姿を見せた者は女あるじの後見をしているといった番頭十兵衛です。年は今が若盛りの二十七、八。のっぺりと白すぎるほどに白いその顔を見迎えながら、名人はじっとまずあの底光りする視線をそそぎかけました。
と――これがすこぶる不審でした。身にやましいところがなかったならば、なにもそれほどおびえなくともよさそうなのに、くちびるまでも血のけを失いながら、おどおどと気もおちつかぬ様子でしたから、あいきょう者がすっかり一の子分を気どって、つんと強く名人のそでを引きながら、いらざるでしゃばりを始めました。
「どうやら、あの野郎が臭いじゃござんせんか。からの箱なぞを調べてみたって、手品使いじゃあるめえし、中からお能面がわいて出るはずもねえんだから、てっとり早く野郎を締めあげたほうが近道かもしれませんぜ」
「控えろ」
しかし、名人は強くしかっておくと、まずなによりも検証が第一とばかりに、それなる十兵衛を案内に立たせながら、倉の中へはいってい
前へ
次へ
全31ページ中14ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング