の数の三人分であるあたりといい、あまつさえ表の文句に見える満願の日うんぬんにいたっては、いかに小町娘たちの無事息災なるべきことを祈り願っても祈りきれぬ不安と絶望がだれにも思い合わされましたので、伝六、辰はもちろんのこと、ふたりの父親たちはいうもさらなり、いぶかしき手紙をひざにのせて、蒼然《そうぜん》とその面を名人も青めくらましながら、ややしばしじっと考えに沈んでいたようでしたが、やがて突如!
「ちくしょうめッ。すっかり頭を痛めさせゃがって、やっと行き先だきゃ眼がついたぞッ。伝六ッ、駕籠はどうしたッ」
「表に待たしてごぜえますよ!」
「よしッ。じゃ、小石川だッ」
「えッ?」
「行く先は小石川の白山下だよ!」
「だって、葬式道具の受取にゃ、久世大和守家中としてあるじゃござんせんか! 久世の屋敷なら麹町《こうじまち》ですぜ!」
「うるせえや! おれがこうと眼をつけたんだッ。やっこだこになってついてこい!」
かくして乗りつけた行き先がすこぶる意外! 大名屋敷ででもあろうと思いのほかに、八百八業中これにましたるぶきみな職業はあるまいと思われる葬具屋九郎兵衛の店先でしたから、伝六、辰の唖然《あぜ
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