気味のわるい白へびがにょろにょろ庭先へはい出してまいりましたゆえ、てまえも、家内も、娘のお美代もすっかりおじけたちまして、いうとおり百両さしあげ、やっぱりおこもりにつかわしましたのでござります」
「その間に祈祷所とやらへ、様子見に参ったことはなかったか」
「おきれいなお比丘尼さまでござりましたゆえ、安心しながらきょうまでお預け放しにしておいたのでござります」
奇怪も奇怪! ぶきみもぶきみ! 事実はがぜんここにいたって妖々《ようよう》と、さらにいっそうの怪奇ななぞと疑雲に包まれ終わったかと思われましたが、しかし、両名の陳述を聴取するや同時、さえざえとさえまさったことばが、ずばりと名人の口から言い放たれました。
「おろか至極な親どもだな! へび使いの比丘尼小町に、たいせつな娘をしてやられたぞッ」
「えッ! では、では、娘をかたり取るために、そんな気味のわるい長虫を使ったのじゃとおっしゃるのでござりまするか」
「決まってらあ。小へびのうちから米のとぎじるで飼い育てたら、どんなへびでも白うなるわ!」
「でも、呪文《じゅもん》を唱えましたら、それを、合い図ににょろにょろとはい出したのが、奇態で
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